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否、杏仁豆腐
食文化はどの大国よりも発達する中国。
我ら日本人は中国からどれだけの恩恵を受けているのだろうか。
さて、今回は中国を代表する食べ物である杏仁豆腐について。
手始めに、杏仁豆腐好きな孫全(ソン・チョン)の一日をご紹介しよう。
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孫青年は中華街の入り口に立っていた。
彼は夢と希望を胸に中華街へ一歩踏み出して行く。
中華街には魅力的な屋台が立ち並ぶ。真剣な眼差しで吟味する。
本能が求める一品を食すために。そこで彼は足を止めた。
目の前に現れた肉まんの屋台。
食そうか、食さまいか。
彼は苦悩した。
葛藤の末に彼は肉まんを諦め、また歩き出す。
人は空腹状態では我を見失う。彼もまた同様。
ふらふらになりながらも中華街を歩き続ける。
気を持ち直して中華街をひたすらに進む。
そこで彼が出会った一品は…フルーツポンチ彼の周りの時間が止まった瞬間であった。
彼の中では限界に近い空腹との静かなる戦いが繰り広げられていた。
ポケットの中の銭を取り出し、フルーツポンチに空腹の全てを委ねようとしたまさにその時であった!
ふと、辺りを見渡してみるとそこには杏仁豆腐の屋台が。
「これだ!!!」
彼は走り出した。フルーツポンチの屋台から背を向け一直線に走り出したのだ。
このグルメロードには魅力的な料理が溢れていた。
その全てに対して彼は決断を下し声を張り上げた。
「否、杏仁豆腐!」
杏仁豆腐を食した彼の目は、3000年の歴史を超えてきた誇り高き中国人の瞳であった。
杏仁豆腐の美味しさの果てに踊り出した彼は中華街の人々を巻き込み、その喜びを、味を分かち合った。
そして彼は中華街を去っていった。
その背中は幸せに満ち溢れており、彼の中国人としての誇りが守られた証であった。
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