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AUTOBAHN

 

 

 

良い子は寝る時間だ。

彼が動き出したのは闇の深まるミッドナイト

ガレージを開ければ、自慢の愛車が顔をだす。

 

毎夜アウトバーンで繰り広げられるレース

今日はどんな奴がいるのだろうか

 

彼は冷静を装いながらも内に秘める期待を隠すことができなかった

 

 

カーブのない直線

 

スピード制限のない道に窮屈感などなかった。

 

唐突に相手は現れる

 

トップスピードへの準備は整っていた

 

 

 

「ほら、来た」

 

 

 

二台の車は合図もなしに突っ走る。スタートがなければゴールもない。

 

お互いの気の済むまで競い合う。

 

 

今夜はいい相手に出会えた。

 

二人は時を忘れるかのように明け方まで走り続けた。

 

 

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それから何か物足りない日々が続く。

 

あいつにはもう一生あうことはないのだろうか。

 

そんな悶々とした感情から、彼は走ることをやめてしまった。

 

 

 

 

月日は流れ、10年が過ぎた頃。

 

彼はまたアウトバーンへ繰り出した。

 

 

懐かしい空気感。

 

愛車のカルマンギアも快調だ。

 

 

ふと隣をみるといつかのライバルがほほえんでいた。

 

 

あの時の感情が蘇る。

 

二人は一生のライバルと認め合った。

 

 

夜の風は彼らを包み込み、明け方の太陽は二人を煌々と照らしていた。

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